ムーンプランナーを作って販売して発送する一連の流れの一部を、外部に委託することにしました。

お願いするのは、都内にある作業所。
主に知的障害のある人が多く活動しているということです。

ほかにもいくつか選択肢はあったのですが、ロットの問題などでフルフィルメントサービスの会社にオーダーするのは難しく、いろんな意見を聞いてまわっても作業所は必ず選択肢にあげられてきました。

もともとソーシャルワーカーの勉強をしていたので、作業所のこともある程度知っていましたが、自分の仕事を依頼するとなると、それはそれで厳しい視点で探したり選んだりする事になります。

小ロットや低価格でオーダーできるということは、必然的に作業所にとっては低賃金になるということです。

作業所の低賃金問題は、かなりゆゆしき問題でもあります。
ある種の社会のゆがみや闇の部分でもあります。
ただ、それはそれで必要な闇でもあるので、単純に明るい社会のために掃討すべし!っていうものでもないと思います。社会全体で見て闇の部分が増えてしまうと問題だけど、闇はある程度必要です。

大事なのは闇も明るさもシームレスであることだったりするわけで。
ゆがみや闇を扱う仕事をしている人もちゃんといます。刑務官とか、福祉NPOとかお寺さんとか教会とか、団体ではなく個人でもたくさん。瀬戸際で止めたり浄化したりする人が必ずいるのです。
(しかしこの浄化作業は強烈に人を操作できるような感覚や万能感を生み出すので、そこにハマってしまう人もいて、正常な感覚が失われがちな部分があります。熱狂的にセラピストになりたがる人は、実はちょっと危険。それこそダークサイドに落ちてしまう可能性がおおいにあります。ちゃんと帰ってこれたらいいんだけど…)

実際のところ、こちらがオーダーした作業量もほかの民間業者にはお断りされるようなロットですから、お支払いする金額も非常に少ないです。
もちろんこちらとしても資金が潤沢なわけでもないので、ある意味精一杯な訳でして。

でも、お願いすることが決まった段階で、「メンバー一丸となって一生懸命取り組みます!」と決意表明のようなメールまでいただいてしまって、正直とても恐縮でした。
ほんとに少ない金額なのに。

だけど、これも微々たるものだけれど、ある種の社会貢献につながるのかなあと考えたりもします。

作業所はやはり民間の団体とは違い、新しい仕事を取ってくるというのはなかなか難しいでしょう。都合のいい仕事がどんどんくる、ということも、あまりないでしょう。
だけど「仕事がある」というのは、やはりどんな人にとっても社会のつながりというか、自分の役割を感じるためにも意味があることです。

寄付がだんだん当たり前の感覚になってきた日本ですが、私は無闇なお金だけの寄付にはイマイチ乗り気になれないのです。

私たちは、まだそんなに余裕のある状態でもないので、やはりたとえ1000円でも無駄にはできません。
でも作業の工程の一部をお願いしてお金をお支払いする分には(予算の上限はあれど)ぜひともお願いしたいのです。

だったら、単なるお金を渡す寄付よりも仕事をお願いする方が、私たちができる事は増えるのではないか。
こちらも苦しまないし(むしろ作業負荷が減って楽になる)、健全な関係なんじゃないかとも思います。
私たちの場合は、1000円をただ渡す寄付と、仕事をお願いして渡す5000円なら、きっと後者の方が意味が大きいのではないか、と思っています。

よくweb記事やドキュメンタリー系番組で、海外の貧困国で女性の自立のためのサポートをしたり、学校を作ったりする人が取り上げられています。
すごいよなー、わたしだって外国語が話せて、大学とかで研究していたら、きっとできたかもしれない。グローバル人材とか言われて、NPO立ち上げて取材されたかもしれない。
なんて思いながらそれをみるのだけれど。

だけど、たった数千円でも仕事をオーダーする事で、近くに住んでいる人たちに(なかなか省みられない事が多い人たちに)、いくばくかのなにかよい価値を渡せるなら、それはどこか知らない国に学校を建てるのと同じくらい、意味があることかもしれない。
webメディアの取材はこないし、情熱大陸にも出られないけど。

確かに私たちがオーダーした量では、焼け石に水だと思います。社会貢献とかいうのも微妙なところかもしれない。
でもそれがいつか「ハチドリの一滴」になったらいいのだけど。
たくさん販売数が増えたら、お願いする量も増えて、お金ももっと多くなるかもしれない。
ああ、だけどそうなると、経営的には別のところにオーダーした方がいいかもしれない。
うーん、でもまあ、それはその時考えよう。

仕事があることで、幸せになる場所で仕事が行われるべきなんだよね、きっと。理想論かもしれないけど。
誰かを苦しめて作られたものは、結局どこかで大きなゆがみにつながるし、そんな苦しさから少し逃れるためにこの奇妙な手帳はあるはずだから……。

そんなことをほんのり願い、ぐるぐる考えながら、今日も働いています。